#05 セローに手を入れる

パフォーマンスダンパー


拝啓

 いろいろなパーツを組み込むのもバイクの楽しさのひとつ。マフラーやステップ、ブレーキなど、ショップに行けばいろいろなパーツがあります。きれいにカスタムされたバイクはカッコいいと思います。
 ですが、どうやら私はつまんない実用的な改造しかしないようです。現在乗っているセローもセッティングこそしましたが、改造というほどのことはしてません。ほとんどノーマルです。明らかに困る、不足しているという部分は手を入れますが、それ以外は手を入れません。以前乗っていたドゥカティも、ピストンを替えて圧縮比を上げたり、サスペンションを初期作動のいいものに交換しましたが、すべて必要を感じてのこと。ステップは最後までノーマルでした。「○○を付けたらカッコいい」的な発想は、私にはないようです。

 私がセローに組み込んだ数少ないパーツのひとつが「パフォーマンスダンパー」です。最初は「パワービーム」と呼ばれていた車体制振ダンパーです。
 “走行時の車体の変形及び振動をダンパーで吸収し、乗り心地、ハンドリングを向上させる”ということらしいですが、まあ、平たく考えてフレームの補強でしょう。最初に発売されたのがセロー用とSR400用というぐらいですから、どちらもフレームの剛性が低いわけで、セローにとって極めて妥当なパーツだと思います。
 パフォーマンスダンパーの、直進安定性が上がって長距離走行がラクになるといった高い評価は聞いていたのですが、なかなかふんぎりがつきませんでした。セローのオリジナルのハンドリングが好きだったし……。組み込んだのは、職場の変更のために通勤距離が一気に伸びたことがきっかけです。それまで片道10km強だった通勤がいきなり30km越え。しかもほとんどがつまらない一級国道。たらたら走るしかない道です。だったらツーリング指向でもいいか、と。

取り外したパフォーマンスダンパー

 で、パフォーマンスダンパーを買ってきて取り付けました。その効果は絶大。あっという間にらくちんセローができ上がります。まるで排気量が大きなバイクになったかのように安定性が増しました。乗り心地さえ良くなったような気がします。長距離のツーリングにはとてもいいアイテムだと思います。
 ですがこのパフォーマンスダンパー、私は数ヶ月で取り外してしまいました。そのあたり説明がむずかしいのですが、普通に走っていて99%はパフォーマンスダンパーありのほうが幸せです。まっすぐ走るし、気持ちいいし。でも、ギリギリの1%のところが満足できなかった。たとえば併走しているクルマが確認せずにいきなりハンドルを切って、こっちが逃げないといけないような場合、時間にしてコンマ数秒でしょうか。そのレスポンスが遅れるのです。やっぱりハンドリングが重い……。よいパーツなのですが、自由至上主義の私とはちょっと肌が合わなかった。

POWER BOX エキゾーストパイプ

「付けたいなー」と思いつつ、結局いまだに手を出していないのが、SP忠男さんの「POWER BOX エキゾーストパイプ」。絶対にいいパーツなのはわかっているのですが、装着しなかったのはノーマルセローのパワー特性にほとんど不満がなかったから。
 トライアル走行ならまた違うのかもしれませんが、街の中を走るレベルなら、私の欲しい中低速域のレスポンスやトラクションはノーマルで十分。セローはもともと高出力を求めても仕方のないバイクだし、マフラー(エキパイ)を交換するだけでパワーアップするわけでもなし。パワーが欲しければ他のバイクに乗ります。でも、POWER BOXを付けたらいいだろうなあ、というのは今も思っています。

エアインジェクションのキャンセル

 その他、現在にセローに装着している、というか取り外したのは、エアインジェクション。エアインジェクションキャンセラーともいいます。
 なにも問題なければいじりませんでしたが、セロー250は長く乗っているとアフターバーンが気になってきます。エンブレの際にパンパンとうるさいのです。セロー225時代はそんなことはなかったのですが、私の乗ったセロー250は3台ともパンパン音がしました。セロー250の持病ではないかと思っています(エアインジェクションのなくなったDG31Jはパンパンしないのかもしれません)。
 このエアインジェクションのキャンセルは、ノーマルパーツを流用して安く上げることもできるようですが、面倒なので「エアインジェクション カットキット」というセット物を買いました。そんなに高いものではないし、ていねいな取扱説明書も入ってて便利でした。「レスポンスが良くなった、トルクが太くなった」なんていう記事も目にしますが、多分に心理的なものでしょう。アフターバーンがなくなることが唯一最大のメリット。そういった症状の出てないセローは、手を入れる必要はないです。

オイルクーラー(SP武川)

 セロー250になってあまり聞かなくなりましたが、225時代にはオイルクーラーを付ける改造が多く見られました。オイル量は250が1200ccですが、225にいたっては1000ccしか入りません(いずれも交換時)。オイル的にはかなり厳しいエンジンなのです。取扱説明書には3,000km毎のオイル交換が指定されていますが、これは長すぎ。できれば2,000km毎で替えてやりたいところです。
 私がそれでもオイルクーラーを付けなかったのは、重くなるのを嫌ったのと、消耗品意識があったためです。セローはいいバイクだけど、華奢だからどう乗っても早くに壊れてしまう。だったら割り切って、壊れたら次のセローを買う、という感じです。

 若いころ、ドゥカティにはモチュールを入れ、セローにはクルマ用オイルの残りを入れたりしてました。消耗品だからオイルも適当でいいや、という意識です。しかし仲のいい整備士に指摘され、目が覚めました。

「どうせあんたのことだから、セローでもドゥカティみたいに走るんだろ?」

 あぁ、そのとおりです。セローに無理をさせたことは一度二度ではありません。異音がするまでブン回したこともあります。ごめんなさい。
 それからセローにもドゥカティと同じモチュールを入れるようになりました。300Vです。エンジンにも無理は(あまり)させないようになりました。バイクの用途や排気量は関係ないです。エンジンにどのくらい負荷をかけるかが問題なのです。

ブラッシュガード

 初めて買ったセローから現在のセローまで、必ず付けていたのが「ブラッシュガード」です。一般的にはハンドガードやナックルガードと呼ぶことが多いようですし、Y'S GEARや社外品でもそういった商品が出ています。でもおすすめは「ブラッシュガード」。いちばん安いヤツです。
 山の中を走っていて、小枝などが手が当たるのを防いでくれるというのが本来の用途ですが、街の中でも同じ効果があります。手入れされてない路肩の樹木が道路まで枝を伸ばしているシーンは少なくないのです。
 何より、冬でも手が温かい。バイク用の最強防寒具は郵便カブでおなじみのハンドルカバーですが、ブラッシュガードもそれに近い効果があります。もちろん同等とまでは言いませんが、風から手を守ってくれるだけでずいぶん違います。大きさと形状がいいのだと思います。都内に通勤しているころは、真冬でも軍手1枚で大丈夫でした。
 ペラペラのプラスチックでできていますから、割れることもあります。そのときはまた買えばいい。安いというのはなんとすばらしいことか。

TANAX キャリングコード3-V

 おまけ。装備というほどではないですが、セロー用の荷掛けヒモとして、TANAX (MOTOFIZZ)の「キャリングコード3-V」を愛用しています。4フックのゴムヒモですが、これが実にセローにピッタリ。使わないときはリアのグリップ部分に引っかけておけるし、いざ伸ばせば宅急便100サイズダンボール箱までしっかり固定できます。本当に便利です。
 リアボックスは好きではないのですが、この荷掛けヒモのおかげで、セローの積載で困ったことはありません。うまく使えば宅急便100サイズ以上の荷物を積むこともできます。騙されたと思って使ってみてください。高いものではありません。

敬具