#03 セローを自在ハンドリングに

フロントフォーク突出し

拝啓

 ノーマルのセローのハンドリングは、基本的に“ダル”です。けっこう鈍いです。とても“キビキビしている”とはいえません。
 セローはオフ車。それもトライアルを志向しているバイクですから、岩ごろごろのガレ場なんかも想定されています。すると敏感なハンドリングはとても危険です。岩を乗り越えようとした瞬間にカクンとハンドルが切れたら普通はコケます。だからセローをコンセプト通りに乗る場合、ハンドリングはダルな方が正解です。

 しかし私のようにオンロード100%の使い方では、ちょっと塩梅が悪いことになります。せっかくの軽量&高レスポンスのマシンなのだから、もう少しハンドリングもクイックになってほしい。気持ちよく曲がって欲しいわけです。しかしセローでいじれる部分は限られています。フルアジャスタブルなんてとんでもない。普通に調整できるのはリアのプリロードだけ。プリロードはとても大切です。これがちゃんと合せてあるのとないのでは、バイクの動きがまるで違います。基本的には自分の体重と好みに合わせるのですが、それだけではセローのハンドリングは大幅には変化しません。
 そこで、フロントフォークの突出しを変えます。フォーク突き出し量の変更は、禁断の果実。ヘタにいじるととても危険なバイクになります。まっとうなチューニングの本や記事では触れてないこともあります。なので、フォークの突出し量を変えるなら、あくまで自己責任でお願いします。何かあっても責任が取れませんので。

 で、上のタイトル写真を改めて見てください。セローのフロントフォークを15mm突き出しています。これでセローの姿勢は少し前のめりになり、ハンドリングが劇的に変わります。異次元の軽快ハンドリングになります。
 ただ、15mmは多すぎるかもしれません。初めてなら10mmぐらいに止めておくのが無難です。1~2mmではわからないかもしれませんが、5mm変えれば絶対にハンドリングの変化がわかります。それぐらい突出し量の変更はシビアです。セローの場合、変えるにしても20mmが限界でしょう。それ以上やると、直線を走っていてタイヤが石を拾っただけで転倒するかもしれません。
 また、突出し量を増やすことで、フォークのストロークが短くなることも頭に入れておいてください。大きなギャップでは、タイヤがフェンダーの裏に擦るかもしれません。たぶん、その時にはコケていると思いますが……。

フロントフォークのカバー

 この写真は、アンダーブラケットのネジを隠しているフェンダーの黒いカバーです。セロー250になってから設けられたパーツですが、これがフロントフォーク調整にものすごく邪魔。いっそのことこのパーツを外してしまおうと考えたのですが、するとフェンダー本体の支えが弱くなってしまう。そこでカバーに穴を開けて、フロントフォークの調整をしやすくしました。
 セッティングが決まってしまえばいじることはありませんが、変更直後は日を置いて2度3度といじるもの。だったら穴を開けてしまおう、と。素人仕事なのでガタガタの穴ですが、まあ、実用上問題があるわけでなし……。
 ちなみにフロントフォーク突出し量を変える方法は、自分で考えるか、どこかで調べてください。方法がわからないようならいじらないほうがいいでしょう。

リアプリロード

 フォークの突出し量が決まったら、プリロードのやり直しです。バイクの姿勢が変わるので、プリロードの再調整は必須です。
 セローのプリロード調整は、リアだけでフロントにはありません。どうするかというと、まずはシッティングポイントを確実に決めます。座る場所の位置決めですが、これがあやふやだとセッティングは無理です。「ここがいい」「私はこのポジションがベスト」というポイントを決めたら、そこにまっすぐ上下に体重をかけて前後のサスペンションの沈み方を探ります。前後が同じように沈むのが私好み(たぶん万人向け)。フロントよりリアが多く沈むようならリアのプリロードを上げます。逆にフロントが沈むようならリアのプリロードを下げます。前後が同じように沈むようになったらプリロードはOKです。
 プリロードというと、車体を持ち上げてゼロ荷重を測ったり、面倒なことをするライダーもいるようですが、感覚優先で大丈夫です。バイクというのは、最後は感覚が優先する乗り物ですから。

ハンドル

 フォーク突き出し、プリロード調整までやると、次に気になるのはハンドル幅です。ノーマルでは問題がないのですが、フロントフォークを突き出してハンドリングをクイックにすると、ハンドル幅を長く感じます。
 ちょっと微妙な感覚ですが、運転するときハンドルに手を添えていますよね。バンクさせるとセルフステアでハンドルが切れていきますが、クイックなハンドリングにしていると、ハンドルを支えている手の重ささえもセルフステアを阻害しているように感じてしまいます。

 それで上のハンドルの写真ですが、何か違和感を感じますか? すぐに分かったら相当なセロー乗りだと思いますが、この状態でハンドルを左右とも15mmづつ詰めて(短くして)います。これで私的にはほぼベストのバランスとなりました。
 ハンドルを詰めるのは簡単。グリップやスイッチを外して、ハンドルの端っこを鉄ノコでギーコギーコと切るだけです。そのままでは切断面のバリが危険なので、ヤスリできれいにします。元どおりに組み直して終わり。半日あれば十分でしょう。

 どのぐらい詰めるかですが、これも左右各10mmが普通、20mmが限界でしょう。若いころ、加減がわからなくて30mmほど詰めたことがあります。するとハンドルが勝手に切れていくような、気持ちわるいハンドリングになりました。自分がコントロールしている感覚が希薄で、危険さえ感じるほどです。すぐにバイク屋に行って、ノーマルのハンドルバーをオーダーしました。やり直しのためです。ちなみにノーマルのハンドルバーはけっこう安いです。今でも4,000円ぐらいで買えるようです。
 と、フォーク突き出しと同じですが、ハンドルが短すぎるとオフロード走行がつらくなるかもしれません。オフロードでは道路のデコボコや石などにタイヤが取られることもありますが、それを押さえ込めるようにオフ車のハンドルは長くなっています。これを短くするのですから、弊害があって当然なのです。これも自己責任でお願いします。

 ここまでのセッティングでセローは劇的に変化します。タイトな道でもクルクルと旋回でき、安定性も十分確保できているという、楽しいハンドリングになるはずです。誰にでも勧められるようなものではないですが、まあ、参考になれば。

敬具