#01 セロー、本当のスーパーバイク

拝啓

 はじめまして。尻子玉といいます。バイク乗りです。還暦になりました。まあ、ジジイの繰り言のようなブログですが、よろしければお付き合いを。

 現在(2023年12月)、私がメインに乗っているのは2017年式のセロー250 (DG17J)です。これが私の6台目のセローになります。初めてセローを手に入れたのが1989年(3RW)ですから時間にして34年。よくもまあ、これだけ同じ車種に乗ってきたと自分でも思います。セローに乗り続けた理由は、セローが本当にスーパーなバイクだったからです。もう、それしかありません。

 オフ車としてのセローの評価は広く知られているとおり。モトクロスコースを跳んだり跳ねたりするのではなく、山道をトコトコと二輪二足で登っていくような、トライアル車に近いところをコンセプトにしています。そういったシチュエーションで、セローは無類のパフォーマンスを見せてくれます。
 とはいうものの、私はオフロードはほとんど走ってません。若いころはあちこちで遊んだりしたのですが、いまは100%オンロード。それでもセローの評価は下がりません。むしろ、オンロードだからこそセローが楽しく、スーパーなバイクなんだと感じています。

 セローの特徴は、車重の軽さと低速域でのレスポンスの良さ、そしてオフ車としては低い車体、といったところでしょう。
 セローのレスポンスについて。ほとんど歩いているような速度でアクセルをいきなり開けても、ポンとエンジンが反応します。まあ、トライアル志向のオフ車なので当たり前といえば当たり前ですが、オフ車でもそうでないエンジンがけっこう多いのです。
 車体の低さもセローの魅力。シート高830mmという数値だけ見るとかなり高そうですが、セローはオフ車。跨がるとシートは簡単に沈みますし、シート幅が狭いので脚がまっすぐ下ろせます。いざコケそうになっても、車重が軽いので「おっとっと……」と最後のところで持ちこたえることもよくあります。
 何より、車体が低いということは重心が低いということです。バイクにとって重心の低さは絶対条件ではありませんし、ある程度重心が高いほうが車体のコントロールがしやすいのも事実。ヤマハのロードスポーツのシート高が高いのは、これが理由です。とはいうものの、サスペンションの長い跳んだり跳ねたり系オフ車はいくらなんでも重心が高すぎでしょう。オンロードでは素直なハンドリングになりません。セローは重心位置が絶妙なのです。

 このセローの低速エンジンと低重心は、街中でむちゃくちゃ頼もしいのです。街の中で使う速度はせいぜい80~100km/hまで。その速度域でセローは無敵です。こちらを確認しないで幅寄せしてきたクルマをスッとかわし、次の細い路地にクルリと曲がりこむ、なんてことが当たり前に、普通にできます。
「セローは遅い」と思っている人が多いようですが、そんなことはありません。セローは速いです。80km/hまでで、セローより速いバイクを知りません。たった18PSしかありませんが(DG17J)、都内では最速でした。街中でいい勝負ができたのは、スズキの「アドレス V125」ぐらい。あれは速かった。
 いまはもう無茶しませんが、若いころは、都内で汚い走り方をするレプリカやスーパースポーツを見つけると、セローをハイビームにして追いかけたものです。セローでも開ければ120km/hぐらい出ます。それが混んだ街の中でも出せるのがすごいところ。さらに渋滞するクルマの間を安定したままクランク状に走れる自在のハンドリングと組み合わされているのですから、セローが遅いはずはないのです。都内でスーパースポーツに乗っているような人はセローを甘く見ていることが多い。でもってぶち抜かれて終わり。スペックを過信して汚い走り方をしているライダーは、おおむねヘタクソです。

 ちょっと話がずれました。要は、セローはとてもいいバイクだ、ということです。
 セローの魅力のひとつは万能性。シチュエーションを選ばず、どこでも走れます。セローは軽二輪なので、高速道路もOK。オフ車なのでオフロードも得意です。つまりは、他のバイクで走ることができて、セローで走れない道路は存在しないのです。もちろんセローの高速走行は快適といいません。かなりツライです。しかし、いざ走ることになればちゃんと走ります。セローですから。
 セローの万能性が活かされたのは、東日本大震災の時でした。歩いて帰宅する人があふれ、クルマが渋滞で全く動けない国道をスムーズに走り抜け、カミさんを職場まで迎えに行き、さらに水が流れて砂の浮いた道を走って息子を学校までピックアップに行きました。セローでないとできなかったと思います。

スーパーバイク」というと、市販車を改造したレースのカテゴリーを指すことが多いようです。でも本当の意味で“スーパーなバイク”を考えるなら、セローがそれに最もふさわしいのではないかと思います。

敬具